2024年8月22日木曜日

小説「生成AI」

※これはフィクションです。


「 根っからの悪人ではないみたい。」

時は2050年。生成AIは三次元上の有機3Dプリンタによって「生物」を生み出すという新しいステージを迎えていた。

現在脚光を浴びているAIという技術は、元々は1950年代よりその主要な元素となる技術がすでに発明されていた。AIといっても、深層学習からデータエンジニアリングまで様々なジャンルがあり、1960年代、1980年代・・・2020年代・・・とその時々で人気は高まったが、ある種の過剰な期待を世間が(そして投資家が)抱え、そしてどこかで限界を迎えて凋落する・・・のループであった。

さらに25年前には医薬品や医療といった分野での活用が期待された。これまで非常に時間のかかっていた基礎研究が、非常に短時間で行えるようになり、高度な学問が誰にでもアクセスできるようになり「民主化」された。

その後2040年代にロボットの時代になった。生成AIの主な課題であったモデルを作るための消費エネルギーやコストが、これまで下火であった量子コンピュータのさらなる実用化によって、Nvidiaを超える形でインテルが王座に返り咲いた。この頃、中国もこの量子半導体生産においてインテルと競合していた。

2045年、中国北京大学が「有機3Dプリンタ」の実用化に対する論文を発表、それを裏付けるかのようにMITが「3Dプリンタで野獣先輩を作る」という試みに成功した。

これは、「実在の人間のDNA情報やリアルタイムの(これは動く心臓や脳のシナプスやニューロンの細かい位置関係まで含む)生態情報までの設計図をデータとして生成AIが生成し、それを3次元上に瞬時に書き込む」というところで、

1番高度な技術が、炭素や水素、酸素からアミノ酸その他を書き出して3次元上に配置するということである。

また、この有機3Dプリンタの製造が加熱し、各社で価格競争が起こった。

その結果、モテない独身男性が有機3Dプリンタをレンタルし、一瞬で早見あかりを作り出して彼女にする・・・といった社会的混乱を招いた。

無論、この頃の早見あかりは59歳であり、現在高齢ないし存命でないアイドルや女優を現実に生成することで事実上の法的問題を回避する人々が現れたが、

事実クラスの可愛い子を生成し、法的訴訟となり、生成された人間をどう処理するか、そもそも廃棄は人権問題ではないか・・・・

といった倫理上の議論がなされたが、時すでにおそかった。

なお、「女バージョンの岸田文雄」はすでに5年間で2000体ほど生産されており、人口少子化を、移民に頼らずに解決するという社会課題は解決した模様だ。

「根っからの悪人ではないみたい」

振られた彼女のコピーとベッドで戯れながら、キモ田キモ太郎は有機生成AIの作り出した女(見た目は振られた彼女と同一の)の支離滅裂な独白を気いいていた。

「根っからの悪人ではないみたい。ペットは3つまでOKよ。野獣先輩は新生だから、市役所までとりにいかないと、未来はスバル色になる。そういえば、連載されていたあの漫画はどうなのかなあ。野獣先輩は、街中を歩くのが少し苦手だった。人混みが苦手というわけではなく、何かしらの視線を感じるからだ。彼の新しい生活は、以前のものとは大きく異なり、慣れるにはまだ時間がかかりそうだった。市役所に向かう途中、彼はふと、これまでの人生について思いを巡らせた。

ペットは3つまでOKと聞いて、少しホッとした。彼が子供の頃から飼っていたハムスター、そして最近手に入れたウサギたちが、彼の心の支えとなっていた。彼らがいるおかげで、孤独感が少し和らいでいたのだ。しかし、心の中ではいつも「これで本当に良いのか?」という疑問が渦巻いていた。新生としての人生は、新しい希望をもたらすものの、同時に過去の重荷を感じさせるものでもあった。

市役所に着くと、彼は少し緊張しながら受付に向かった。未来がスバル色になる、とはどういうことだろう?スバルという言葉が彼の頭の中で何度も繰り返された。スバルは星の集まり、輝く光、そして新しい旅の象徴だ。彼にとって、それはまだ未知の領域だった。

受付の女性は、彼に温かい笑顔を向け、手続きを進めた。「お名前は?」と問われ、彼は少し戸惑いながらも答えた。「野獣…いや、新生の野獣先輩です」。その言葉を発した瞬間、彼は自分自身の変化を実感した。過去の自分とは違う、新しい何かが彼の中に芽生えているような気がした。

手続きが終わると、彼は新しい身分証明書を受け取った。そのカードには、彼の新しい名前が刻まれており、それを手にした瞬間、彼はこれまでの人生が一つの区切りを迎えたことを感じた。しかし、未来はまだ不確かであり、彼はその先に待つスバル色の世界に足を踏み入れる準備ができているかどうか、確信が持てなかった。

市役所を出た彼は、街のカフェで一息つくことにした。窓際の席に座り、コーヒーを飲みながら、ふと頭に浮かんだのは、あの連載されていた漫画のことだった。彼が昔夢中になって読んでいたその漫画は、いつの間にか連載が終了してしまっていた。主人公がどのような結末を迎えたのか、彼はずっと気になっていた。

コーヒーを飲みながらスマホで検索してみると、漫画の最終話の内容がネット上に掲載されているのを見つけた。彼は一気にそのページを読み進めた。主人公は、彼自身の過去と向き合い、新しい未来を切り開いていく物語だった。その結末は、彼にとってとても感慨深いものであり、まるで自分自身のことを描かれているかのように感じた。

「結局、過去にどう向き合うかが、未来を決めるんだな」と、彼は呟いた。漫画の主人公も、彼自身も、過去の苦しみや喜びを抱えながら、新しい一歩を踏み出すことができるのだと感じた。

外に出ると、青空が広がっていた。スバル色の未来は、彼の目の前に広がっている。彼は新しい人生を歩み始める決意を固め、再び歩き出した。その歩みは、かつての彼のものとは違い、自信に満ち溢れていた。新しい野獣先輩としての生活が、これから始まるのだ。」

「わけわかんねえよ」

キモ田はそうぼやきながら彼女の胸をまさぐった。



※これはフィクションです。

0 件のコメント:

コメントを投稿